今日は雨の中、新宿にあるICCというギャラリーを訪ねた。ICCのオープンスペースは無料で色々観れて楽しいのだ。中でも目をひいたのが、「多義の森」という作品。振子のモデルを数値的に演算したもので、その力学系の解をモニタに表示させるものだった。具体的なモデルはあまり把握していないけど、多分、数学的には解けない非線形モデルを数値的に解いたものと思われる。おそらく、本当の解を探し当てる事に注力するならば計算精度、計算方法などもひとつの研究領域となるのだろうけど、この作品は、比較的単純な振動モデルの中の無限に広がる複雑さを可視化することを目的としている。可視化された演算結果は宇宙を想像させ、とても神秘的だった。作者は、このような力学系をコンピュータで演算させて得た一連の作品を<イマジナリー・ナンバーズ>と呼んでいる。
いわゆる虚数「i」のことだ。2乗して「-1」になる、という、想像された数。ある数字に-1を掛けると・・、数直線上を180°回転して正負が逆になる。2乗して「-1」になるということは、例えば「1」に「i」を掛け算すると90°だけ回転して「i」となり、もう1回「i」を掛け算すると、さらに90°進み、-1になるということだと思っている。つまり、数直線上に「i」という虚軸を導入することで、回転運動するモデルは「i」を使って比較的簡単に表現することができる・・というように記憶している。
そう考えると、単純な話だが、オイラーの方程式に代表されるように「i」は数学的に神秘的な力を持っている。やはり「i」「π」「e」はこの現実世界の裏側で無限の広がりを持って暗躍しているのだ。これはちょっとした都市伝説以上に興味深いことだと思う。無知であるがゆえの勝手な想像だけど、現実の裏領域を見ているというか、そう思わせるような力が「多義の森」という作品に込められていたと思う。興味のある人は訪れてみると良いと思う。

http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2008/Openspace2008/Works/ambiguousgreen_j.html